こばなし。

2009/09/15

飛びつづけて

ぼくは鳥。

目標ができたぼくは、海に向かうことにした。

海を越えた先に、見たこともないたくさんのものがあると聞いたから。

まずは、この雪山を越えないといけない。

しばらくいくと雪山は、雪原に変わっていた。またさらに進むと、氷原になっていた。

ぼくは凍えながら、必死に飛んだ。止まれば二度と動けなくなるとわかっていたから。

意識を失いかけたとき、明るい声が耳に入って我に返った。

見ればもう雪はまばらになっている。白い花が凛と咲いていた。その周りで遊ぶリスさんたち。

もうろうとしながら飛んでいたから、いつの間にか氷原を過ぎたことにも気づかずにいたんだ。

ぼくは陽あたりの良いところで身体をあたためた。

そしてリスさんたちに聞いてみた。

「どこに海があるか知ってる?」

「知ってるわ。わたしたちは物知りだもの。」

「東の海はあたたかくておおきいの。西の海はつめたくて島があるの。」

「どっちが東でどっちが西なの?」

「西じゃないほうが東で、東じゃないほうが西よ。」

「???」

今飛んできた方角さえわからないぼくには難しい問題だ。

キラキラとした瞳で見つめられたぼくは何も言えず、お礼を言って飛び立った。

それからぼくは、幾日も幾日もかけて飛び、ようやく海に出ることができた。

「これが・・・海かぁ!」

だけどこの海が、東の海なのか西の海なのかわからない。果てしなく広くて、でも遠くに島も見える。

ぼくは浜でしばらく身体を休め、そして、

「まずは、あの遠くに見える島に行ってみよう!」

ぼくは海に飛び出した。

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2008/01/06

ほど遠い楽園

ぼくは鳥。

迷いの森を抜けた瞬間から、しばらく目を開けられなかった。
あまりに光が眩しすぎて。

ようやく痛みが治まると、ぼくはゆっくりと目を開けた。
そこは、初めて見る景色。真っ白い世界。
「ここは・・・雪山?」
しばらく佇んでいると、ひゅうと冷たい風が通り過ぎた。
「さ、寒い・・・」

ぼくは後ろを振り返ってみた。
鬱蒼とした黒い森が立ちはだかっている。
森の中は寒くはなかった。
けど、もう戻りたくはない。

ここで立ち止まってても仕方ない。進まなきゃ。

再び飛び始めたところで、なんとも言えない地響きが聞こえてきた。
「なんだろう?」
あたりときょろきょろと見渡す。
突然、山が落ちてきた!
「うわぁぁぁぁぁ」
ぼくは危険を感じて、避けるのにいっぱいいっぱいだった。
たぶん、数分の出来事だったんだけど。

なにが起こったのかわからないでいると、笑い声が聞こえてきた。
「ははははは。なかなかうまく避けたじゃないか。」
「今のはなに?君はだれ?」
「今のはなだれ。雪が崩れたんだ。俺は、世界中を旅してる。今度は、この山の山頂を越えようと思ってる。」
見上げても、雲にさえぎられていて山頂は見えない。
すごいことをしようとしてるんだな・・・。

「ところでお前、真っ黒だな。もっと明るい色のほうが似合いそうだけど。」
ぼくは自分の身体を見た。たしかに真っ黒だ。
なぜ?ずっと暗い森にいたから?
「お前の目、消え入りそうだぞ。大丈夫か?そのまま消えてなくならないようにな。」
彼はいたずらっぽく笑う。

それからぼくを、落ち着けるところに案内してくれた。
彼自身、山頂を越えるのはまだ先の話らしい。それと、今まで旅してきたいろいろなところの話を聞かせてくれた。
「いくつもの海も越えたし、数え切れないくらいたくさんのところに行った。いろんなヤツの話も聞いた。」
「1番印象に残ってるのはアレだな。見渡す限り全部キレイな花で埋めつくされてるんだ。楽園と言ってもいいくらいの花畑だったよ。」
「おもしろかったのは、ある国の伝説の話。その国では『青い鳥』を見ると幸せになれるんだと。青に近いヤツならいっぱい見てきたけど。青いのは見たことないな。お前みたいに真っ黒なのも初めてだけど(笑)」

ぼくは、一喜一憂しながら聴き入ってたに違いない。
彼は、ぼくの旅の参考にといろいろな話をしてくれたんだ。

ぼくには目標ができた。
お花畑をさがすこと。青い鳥さんをさがすこと。
そしてまた、雪山に飛び立っていった。

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2007/08/02

物知りふくろうさん

ぼくは鳥。

迷いの森に入って、幾つの月日が経ったのだろう。

ふいに光が目を射した。少し痛く感じるほどの眩い光。
「出口だ!」
諦めずに飛び続けてきてよかった。
ぼくはやっと日の中へ戻れる・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

迷いの森を飛んでいるうちに、ぼくはだんだんと目が慣れてきた。
そして気づいた。
誰も近寄らない迷いの森と思っていたのに、そこで生きているものたちがいたということ。
地を這うもの。
木を登るもの。
鳥じゃないのに、木々の間を飛んでいるもの。
じっと動かないもの。

ある日ぼくは、物知りふくろうさんに出会った。
「・・・こんにちは。」
「・・・迷ったのかぃ?」
「はい・・・・・」
「・・・そうやって、誰かのせいにするのかぃ?」
「え!?」

ずっと、迷い込んだと思っていたこの森に、ぼくは自分から入り込んだという。
それは、現実の煩わしさから逃れたかったから。
自分は迷子なんだと、不幸な立場に追い込むことによって責任を回避するため。
・・・つまりぼくは、逃避のためにここへ来た・・・。

思えばそうかもしれない。
めまぐるしく動く現実世界では、次々と物事を決断していかなければならない。
雨が降りそうなら、どこへ行って雨宿りをするか。
日差しが強いなら、どこかで休むか、飛び続けるか。
突風がきたなら、その場で耐えるか、風とともに流されるか。

確かにぼくは、時間がほしいと思っていた。
ゆっくりと流れる時間が。
決断に焦らなくていい時間が。

だからぼくは、自らこの森に入ったんだ。
いつ抜けられるかもわからないけど、現実とは違う時間が流れるこの森に。

物知りふくろうさんは最後にこう言った。
「ここは確かに迷いの森。誰の心にも存在する。迷いのある者が入り込む。その迷いが晴れたとき、または抜け出したいと願ったとき、自然と道が拓ける。」

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2007/03/31

迷いの森

ぼくは鳥。

かの日にぼくを空へ誘ってくれた彼とはぐれ、どれくらいが過ぎただろう。
ぼくはずっと飛び続けている。

彼を見つけられないのは夜だからだと気づいた。
ぼくは朝を待つことにした。
だけど暗闇のせいで、1晩羽を休ませられそうな宿木も見つけられない。
ぼくは飛び続けるしかなかった。
ぶつかりながら。
暗闇の中を。

ふいに薄明かりが見えた。
細く射し込むぼんやりとした光。
「木洩れ日・・・?」

光に近づいて、やっとわかった。
ここは深い森。
日も差さないほどに木々が重なり合い、同じような景色が方向感覚を狂わせる。
1度入ったら出られないと言われる・・・迷いの森。

ぼくは愕然とした。
真っ暗闇を飛んでいるうちに、迷いの森に入り込んでしまったんだ・・・。

力なく、ふらふらと飛んでいたら、ぼくは大きな木に正面からぶつかってしまった。
ぶつかった衝撃で、羽も動かせないまま、地に堕ちる感覚を覚えた。
・・・このまま、地面に叩きつけられるのかな・・・
そう思った直後、硬い地面とは違った、やわらかい感じのところに落ち着いたのがわかった。

「・・・なんだろう、ここ?」
ぼくが落ちたところは、葉が幾重にも重なっていた。
ぼくがぶつかった大きな木の、枝の上。
まるで、疲れ果てたぼくのために、用意されたベッドのよう。
ぼくはそのまま、眠りについた。

眠りながら、ぼくは考えた。
薄明かりが射したということは、朝がきたんだ。友だちが言ったように、朝がきた。
でもここは深い森。
ぼくが望むやさしい日の光は、森を抜けないと見られない。
・・・でもここは、迷いの森。
どうしたら、森から出られるんだろう・・・?
・・・入れたんだから、出られるよね?
真っ直ぐに行けば、きっといつか出られるよ。

目を覚ますと、幾重にも重なっていた葉が、みんななくなっていた。
「早く行け」と、木が訴えているようだった。
ぼくは、「ありがとう」とお礼を言って、飛び立った。

ぼくは、自分を信じて旅を続けるしかないんだ。
もう1度、やさしい日の光につつまれる日を夢見て。

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2007/03/09

空へ

ぼくは鳥。

最近まで、ぼくは飛べなかった。
飛べるということを忘れていたんだ。ずっと、カゴの中にいたから。
もしかしたら、羽が傷ついていたのかもしれない。

ある日ぼくは、気持ちよさそうに空を飛んでいる1羽の鳥を見た。
彼があまりに気持ちよさそうに飛んでいるから、ぼくはいつからか空に憧れるようになった。

カゴの中は、居心地がよかった。
仲間もたくさんいたし、安心できた。
でも時おり、そこが窮屈に感じてもいた。

ぼくはいつものように、カゴの中から空を眺めていた。
すると、気持ちよさそうに空を飛んでいたあの彼が話しかけてきた。
「一緒に飛ぼうよ!」
「ぼく、飛べないよ。」
「飛べるよ!羽があるんだもの。」

ぼくは飛んでみようと思った。
けどそれは、カゴを出るということ。
このカゴを出たら、もうここの仲間に会えないかもしれない。
それでもぼくは、カゴから飛び出した。

最初のうち、飛ぶというより、ばたついてるだけだったぼくに、彼は飛び方を教えてくれた。
いろんなことを教えてくれて、いろんなとこに連れてってくれた。
彼と一緒に飛ぶのは楽しかったし、ぼくはいっぱい笑うことができた。

でも、ぼくが思っていた以上に、空は厳しかった。
いきなり突風が吹いたり、強い雨にうたれたり。
彼とはぐれることもたびたびあった。

そんなとき、たまにぼくはあのカゴを思い出す。
空へ飛び立たずに、あのままカゴの中にいれば、こんな寂しい思いをすることもなかったのかな・・・。

でも友だちが教えてくれた。
「今は夜だから、向こうの明かりがキレイに見えるけど、明けない夜はないんだよ。必ず、朝がくるんだ。」
ぼくは気づいた。
そうか、暗いのは夜だったからなんだ。
この闇じゃぁ、はぐれた彼を見つけられない。

ぼくは朝を待つことにした。
朝がきて、光がさせば、またぶつからずに飛べるようになるから。
そしたらきっとまた夜がくるけど、そのあとには必ず、また朝がくるんだ。

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